チューダーのオーバーホールは必要？ムーブメント載せ替えと費用の目安

チューダーの時計を長く使っていると、「そろそろオーバーホールした方がいいかな」と感じることがあるかもしれません。特に、ムーブメントの載せ替えや費用、どこに依頼すべきかなどは、多くのオーナーが迷うポイントです。

オーバーホールは、正規サービスと民間修理店のどちらに出すかで内容や費用が変わります。正規サービスは純正部品を使い、国際保証も付く安心感がありますが、料金はやや高めです。一方、民間修理店なら費用を抑えつつ柔軟な対応が可能で、時計の状態や希望に合わせて選ぶのが理想です。

ただし、古いモデルや長期間メンテナンスをしていない時計は注意が必要です。部品の供給が終わっていることもあり、10年以上放置すると摩耗やサビが進み、修理費用が高額になるケースもあります。

この記事では、チューダーのオーバーホールを安心して任せられる依頼先の選び方や、適切なメンテナンスの周期、ムーブメント載せ替えが必要になるケースとその費用の目安について、できるだけわかりやすく解説します。

チューダーのオーバーホール前に知るムーブメント載せ替えの基礎

正規料金の相場と見積もりの仕組みを知っておこう

チューダーのオーバーホール料金は、正規サービスと民間修理店で仕組みが大きく異なります。まず、正規ルート（日本ロレックスのサービスセンターなど）に依頼する場合、料金は時計のモデルや構造によって一律の基本料金が設定されています。

例えば、自動巻きモデルで約24,000円前後、クロノグラフモデルで38,000円台が目安です。ここには、分解・洗浄・注油・再組立・調整・防水テストといった標準工程がすべて含まれています。

つまり、基本料金は「時計を新品同様の状態に戻すための最低ライン」として定められているのです。

一方で、部品の劣化や摩耗が見つかると追加費用が発生します。たとえば、ゼンマイ・パッキン・歯車・リューズといった消耗パーツの交換が必要な場合、その都度見積もりが加算されます。

正規サービスの特徴は、純正パーツの使用と国際保証が付くことです。オーバーホール後に2年間の保証が適用されるため、長期的な安心感を求める人に適しています。

一方、修理店によっては同様の工程をより低コストで提供している場合もありますが、その場合は部品や保証内容が異なるため、「正規料金＝安心料」という理解が適切です。

つまり、正規料金とは単なる費用ではなく、純正品質と長期保証を得るための投資だと考えるとわかりやすいでしょう。

修理やオーバーホールはどこに依頼するのが安心？

チューダーのオーバーホールを依頼する際は、「正規サービスセンター」か「民間の認定修理店」のどちらに任せるかが大きなポイントです。どちらにもメリットと注意点があるため、特徴を整理して比較すると選びやすくなります。

項目	正規サービスセンター	民間の認定修理店
使用部品	すべてチューダー純正部品	純正または互換パーツを使用（店舗により異なる）
保証内容	約2年間の国際保証（世界共通サポート）	約6か月〜1年の店舗保証が一般的
作業工程	ロレックス基準の検査（防水・精度・耐久性）を全て実施	店舗により柔軟に対応、仕上げオプションが豊富
納期の目安	約1〜2か月	約2〜3週間と短め
費用の目安	やや高め（信頼性重視）	比較的リーズナブル（技術者の腕次第）
対応範囲	現行モデル中心（アンティークは不可の場合あり）	アンティーク・特殊モデルにも対応可
おすすめタイプ	保証・純正品質を重視する人	費用・スピード・柔軟性を重視する人

このように見ると、「保証と純正品質を求めるなら正規」「コスパと柔軟性を求めるなら民間」という選び方が基本です。

また、アンティークモデルや生産終了モデルの場合は、正規では修理を断られるケースもあるため、専門知識を持つ民間修理店に依頼する方が安心です。

最も重要なのは、どちらを選ぶにしても「技術者の経験と実績」を確認することです。口コミや修理実績を事前にチェックし、信頼できる店舗に任せることで、あなたのチューダーを長く快適に使い続けることができます。

メンテナンスは何年ごとに行うのが理想？

チューダーのオーバーホールは、3〜5年に1回を目安に行うのが理想的です。これはムーブメント内部の潤滑油が経年で劣化し、摩擦や精度の低下を防ぐためです。

時計の使用頻度や保管環境によっても異なりますが、5年以上放置すると内部の金属摩耗が進み、結果的に修理費用が高額になることがあります。

特に、湿気や温度変化が多い環境で使用している場合は、防水パッキンの劣化が早く進むため、3年ごとの点検が望ましいです。また、普段あまり使わない時計も油の固着が起こりやすく、動かさない期間が長いほどリスクが高まります。

定期メンテナンスを行うことで、次のようなメリットがあります。

メンテナンスを定期的に行うメリット	内容
精度の維持	日差のズレが少なくなる
部品寿命の延長	摩耗やサビを未然に防ぐ
高い防水性能の保持	パッキン交換で水分侵入を防ぐ
高額修理の回避	劣化を早期に発見できる

このように、定期的なオーバーホールは長期的なコスト削減にもつながると考えられます。時計を末永く使うためには、時間と費用を惜しまず、適切な周期でメンテナンスを行うことが大切です。

チューダーと同じく高級時計ブランドのパネライでも、オーバーホールの必要性をめぐって誤解されることが多いです。オーバーホールの重要性をさらに理解したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
→ パネライのオーバーホールは本当に不要？必要性と誤解を解説

10年間放置した場合に起こるトラブルとは

チューダーの時計を10年間オーバーホールせずに放置すると、内部機構の劣化や故障のリスクが非常に高くなります。時計のムーブメントは精密に組まれており、潤滑油が時間の経過とともに乾燥・酸化することで金属同士が直接擦れ合い、摩耗が進行します。

この状態で使用を続けると、歯車の欠損やゼンマイ切れなどの重大なトラブルにつながる可能性があります。また、防水パッキンも劣化しているため、湿気が内部に侵入しやすくなり、錆の発生や防水性能の低下が見られることも少なくありません。

さらに、放置期間が長いほど修理時に交換が必要な部品が増え、結果的にオーバーホール費用が高額になる傾向があります。

つまり、「動いているから大丈夫」という判断は非常に危険です。定期的に点検を行えば、軽微な劣化で済む部分も10年放置すれば取り返しのつかないダメージになることがあります。

時計を長く愛用するためには、使用頻度にかかわらず5年を目安に一度はオーバーホールに出すことをおすすめします。

オーバーホールができない理由と対象モデル・対処法

チューダーの時計でも、すべてのモデルがオーバーホールできるわけではありません。

主な理由は部品供給の停止や構造の特殊性によるものです。特に、古いアンティークモデルやリファレンスナンバーが4桁の「デカバラ」「レンジャー」などは、メーカーでの修理受付を一時的に停止している場合があります。

この場合の対処法としては、チューダーやロレックス系の修理に精通した専門技術者がいる民間修理店を利用することが現実的です。こうした店舗では、独自の技術で欠品パーツを製作したり、互換部品を使用して修理対応してくれることがあります。

ただし、注意したいのは「改造品やコピー品」は正規でも民間でも修理対象外となる点です。さらに、過去に純正外パーツが取り付けられていると、メーカー保証が受けられなくなることがあります。

もし修理ができないと判断された場合でも、状態を悪化させないための保管方法を見直すことは可能です。湿度の低い場所に保管し、定期的にゼンマイを巻いて動かすことで内部の固着を防げます。

いずれにしても、修理の可否は専門技術者の判断が必要なため、まずは見積もりと診断を依頼するのが確実です。

作業後の保証内容と依頼時に注意すべきポイント

チューダーのオーバーホールを安心して任せるには、作業後の保証内容を正しく理解しておくことが欠かせません。保証は「修理完了後の不具合」に対応するものであり、依頼先によって期間・範囲・条件が大きく異なります。

正規サービスセンターの場合、オーバーホール後には2年間の国際保証が付与されます。これは、自然故障や内部機構の不具合が発生した場合に無償で修理・再調整を受けられる制度です。ただし、落下や磁気の影響、水入りなどの外的要因は対象外となります。

一方、民間修理店では保証期間が6か月〜1年程度のことが多いですが、迅速な対応や柔軟なアフターケアを強みにしている店舗もあります。中には、再調整や再検査を無償で対応してくれるところもあり、実質的な満足度は高い傾向にあります。

依頼時に確認すべき主なポイントは次の3つです。

確認項目	チェック内容
保証期間	何か月または何年か明確に記載されているか
保証範囲	精度・防水・動作不良など、どの部分が対象か
免責事項	衝撃や誤使用によるトラブルが除外されていないか

また、作業後に第三者が時計を開けた場合や、社外パーツを装着した場合は保証が無効になることもあります。特に、中古購入したチューダーをオーバーホールする場合は、どこで整備された時計かを把握しておくことがトラブル防止につながります。

保証書や修理明細を受け取ったら、内容を必ず確認し、後日の問い合わせにも対応できるよう保管しておくと安心です。これらを意識することで、「修理後に困らないオーバーホール」を実現できます。

チューダーのオーバーホール時の載せ替えの実例と費用まとめ

分解から検査までの作業工程をわかりやすく解説

チューダーのオーバーホールは、単なる清掃や修理ではなく、時計を新たに再構築する精密作業です。すべての工程が密接に連携しており、どれか一つでも疎かにすれば本来の性能を取り戻すことはできません。

主な工程は次の5段階で構成されています。

これらの工程を丁寧に積み重ねることで、チューダー本来の精密性と信頼性が完全に再現されます。まさにオーバーホールは、時計を「直す」ではなく「蘇らせる」ための職人技なのです。

部品交換や洗浄が精度維持に欠かせない理由

チューダーの時計が長年高い精度を保つためには、適切な部品交換と徹底した洗浄が欠かせません。ムーブメント内部では、数百の金属部品が常に動いており、摩耗や汚れが蓄積すると精度が大きく低下します。

潤滑油は時間とともに酸化し、粘度が変化します。すると、歯車がスムーズに回転しなくなり、摩擦熱で金属が劣化します。定期的に洗浄を行うことで、古い油や金属粉を除去し、新しい潤滑油を均等に行き渡らせることができます。

また、ゼンマイ・パッキン・歯車などは消耗が早い部品の代表です。これらを定期的に交換することで、ムーブメント全体の動力伝達が安定し、精度を長期間維持できるのです。

一方で、必要のない部品まで交換するとコストが上がるため、熟練の技術者は「修理」と「維持」のバランスを見極めて判断します。これにより、余分な出費を抑えながらも、時計本来の性能を引き出すことが可能です。

つまり、オーバーホールでの部品交換や洗浄は、故障した部分を治すための作業ではなく、精度を守るための予防整備という位置づけになります。

費用の目安と見積もり金額が変わる要因とは

チューダーのオーバーホール費用は一律ではなく、時計の状態や構造、依頼先によって大きく変動します。一般的な目安としては、民間修理店で28,000〜42,000円程度、正規サービスでは25,000〜40,000円前後が相場です。ただし、これは「基本作業のみ」の価格であり、状態次第ではさらに上がることもあります。

見積もり金額が変動する主な要因には次のようなものがあります。

要因	具体的な影響内容
部品の摩耗・損傷	交換が必要になると追加費用が発生
モデルの種類	クロノグラフやGMTなど複雑な構造ほど高額になる
外装仕上げ	研磨・再仕上げを希望すると別途料金
防水性能の検査	ダイバーズモデルなどでは試験工程が増える
保証の有無	保証期間や内容によって価格差が出る

さらに、ムーブメント載せ替え（全交換）が必要な場合は、部品代が大幅に上がるため、見積もりが数万円単位で変動します。

修理店によっては、初回見積もり時点では不具合が見つからず、分解後に追加費用が発生することもあります。これを避けるためには、依頼時に「追加費用の発生条件」を明確に確認しておくことが大切です。

また、価格だけで比較するのではなく、どこまでの作業が含まれているかをチェックすることも重要です。同じ金額でも、洗浄・注油・防水検査・保証範囲が異なることがあります。

つまり、オーバーホールの費用は「高い・安い」で判断するものではなく、作業の内容と保証の質で見極めることが信頼できる選び方といえます。

オーバーホールの費用に迷ったときは、「本当に必要なのか」という視点も大切です。費用対効果や実施のタイミングについて知りたい方は、こちらもチェックしてみてください。
→ 時計のオーバーホールは本当にもったいない？判断するための基準とは

修理対応が難しいモデルとその対応方法

チューダーの時計の中には、修理対応が難しいモデルが存在します。

特にアンティークモデルや旧型のリファレンスナンバーを持つ時計は、現在では純正部品の供給が終了していることが多く、メーカーでも受付を停止しているケースがあります。代表的なのが「デカバラ」や「レンジャー」など、リファレンスナンバーが4桁のモデルです。

このような場合は、チューダーやロレックスの構造に精通した専門技術者を持つ民間修理店に相談するのが現実的な対応です。民間修理店の中には、メーカーで扱えない部品を独自に調達したり、互換性のある部品を加工して修復する高い技術を持つ職人もいます。

ただし、注意すべきは「改造品」や「非純正パーツを使用したモデル」です。こうした時計は、正規・非正規を問わず修理対象外になる場合があります。そのため、今後のメンテナンスを見据えるなら、できる限り純正状態を保つことが望ましいといえます。

もし修理が難しいと診断された場合でも、適切な保管と軽いメンテナンスを継続することで時計の状態を維持できます。湿度の低い環境で保管し、定期的にゼンマイを巻くことで内部の固着を防ぐことが可能です。

こうした小さなケアが、将来的な再稼働の可能性を広げることにつながります。

防水テストや品質検査で確認される重要ポイント

オーバーホールの最終段階で行われる防水テストと品質検査は、時計の安全性と信頼性を保証するために欠かせないプロセスです。

つまり、防水テストや品質検査は「仕上げ」ではなく、チューダーがチューダーであり続けるための最終保証工程なのです。これを丁寧に行うことで、修理直後から安心して長く使い続けることができます。

実例から学ぶ依頼時の注意点とプロのアドバイス

オーバーホールを依頼する際には、事前の準備とコミュニケーションが結果を大きく左右します。ここでは、実際に起こりがちな例をもとに、注意点とプロがすすめる対策を紹介します。

あるケースでは、依頼時に「特に異常なし」と伝えたものの、分解後にゼンマイ切れや歯車摩耗が見つかり、追加費用が発生してトラブルになったという例があります。このような誤解を防ぐためには、依頼前に「どんな症状があるのか」「いつから不調を感じているか」を具体的に伝えることが大切です。

また、プロの技術者によると、「時計の使用状況」を共有するだけでも見積もりの精度が上がるといいます。たとえば、日常的に水に触れる機会が多い場合や、長期間動かしていない場合など、使い方の情報から劣化リスクを推測できるのです。

さらに、オーバーホールを依頼する際には次の点も意識しておくと良いでしょう。

一方で、費用だけを基準に依頼先を選ぶと、部品品質や検査工程が十分でないケースもあります。プロの視点から言えば、「安さよりも技術と信頼性」を重視する方が結果的に時計を長持ちさせることにつながります。

つまり、成功する依頼のポイントは「技術者に任せきりにせず、依頼者も情報を共有して協力すること」です。こうすることで、精度・仕上がり・費用すべてに納得できる、満足度の高いオーバーホールを実現できます。

総括：チューダーのオーバーホール時の載せ替えで知っておくべき重要ポイント

この記事のポイントをまとめます、

オーバーホールや修理の判断は、ブランドやモデルによって考え方が異なります。以下の記事では、他ブランドの事例や費用・対応の違いを詳しく紹介しています。チューダーのメンテナンスを検討する際の参考にしてみてください。